これはダメ!免税制度の悪用

免税店対応をする中で、中小小売店が心配なのは、やはり税制上の理解と不正や悪用による店舗被害ではないでしょうか?巻き込まれないため、または不本意にも悪用してしまわないために知っておきたい事例を紹介します。



免税制度の悪用って実際にあるの?

免税制度の悪用は実在しており、故意的なものから、不本意なものまで、また購入者によるものから、事業者自体の不正まで、その事例は様々です。
・実際にどのような免税制度の悪用がなされているのか?
・お店への被害はあるのか?
今後も免税対応をされる中小小売店のみなさまにはぜひ、免税制度が悪用された事例をいくつか把握しておくことをオススメします。



免税制度を悪用した事例①:「大手百貨店での課税逃れ」

大手百貨店が大阪国税局の税務調査を受け、3年間で消費税約1,700万の申告漏れを指摘された。これは大手百貨店で、外国人客3人が約36,000万の買い物をした際に消費税分を免税扱いにしていたにも関わらず、国税庁では、この購入を免税の対象にならないと判断したために起こったものです。
免税制度とは、海外からの外国人旅行者が、おみやげ品などを国外へ持ち帰ることは、実質的に輸出と同じと考え設けられている制度です。消費税の免税を受けるためには、パスポートなどの提示の他、購入後国外へ持ち帰るものであることを記載した購入者誓約書の提示が必要になります。
では、今回、なぜ国税庁は「免税の対象にならない」と判断したのでしょうか?それは、今回の外国人客の購入が、かばん数十個に靴下数百点など購入数が多く、旅行者のお土産の範囲を超えていること、また旅行客では取得しにくいクレジット機能付き顧客カードを所有していたことなどから、この外国人客を「定住者」と判断し、免税の対象にならないと判断したようです。
つまり、消費税免税手続き自体には不正はなかったのですが、結果、課税逃れが起こってしまっており、大手百貨店側のチェック体制の甘さが指摘されています。

その他関連記事
・消費税裁判 外国人旅行客への金製品販売は名義貸しの偽装?(2019.3.4.日税ジャーナル)
・免税店で“替え玉”脱税 抜け道多く、訪日家族の旅券「代用」(2019.11.23西日本新聞)



免税制度を悪用した事例②:購入数の水増しによる不正申告

 202135日、愛知県の自転車輸出業を営む中小企業が、20161月〜18年の12月の間に計約13,900万円の還付を不正に受けたなどとして、名古屋地検特捜部は容疑者を逮捕した。
 事業者は、輸出品に消費税が課税されないため、輸出業者が国内で商品を仕入れた際に支払った消費税は還付を受けられます。しかし、今回の場合、輸出台数を水増しするなどして不正に税務署に申告し、還付額を増やしていたとみられています。
 このように輸出免税制度の悪用は事業者側でも起こり得ます。

その他関連記事
・免税店、消費税の不正還付請求が横行 増税で「うまみ」(2019.12.25朝日新聞デジタル)
・「輸出免税」悪用し、消費税1億4千万円脱税 尼崎の輸出業者を大阪国税局告発(2018.6.7.産経WEST)



まとめ

 オリンピックの準備が進む中、国税庁では、消費税の不正還付の防止に力を入れており、令和3年度税制改正で、輸出免税を悪用した消費税の不正還付防止への対応を強化する措置が取られています。
 ますます明確になる「免税店のメリット」への理解も深めつつ、免税店としてのあり方、より確実に無理なく免税制度を訪日外国人に利用してもらえる環境作り、など今のうちに進めていきたいものです。

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